コンサル
- FreeMe labs.
- 18 時間前
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電車の中で、バスの中で、会社で、バイト先で、コーヒーショップで、レストランでも、散歩中でも、あなたはそのスマホを見て何を探していますか?もしかすると、自分に都合の良い物語のネタを探しているのではないですか。他人とのやり取りや、欲しいものの検索や、ゲームや楽曲や映画の視聴まで、人は自分に合ったネタを見つけ物語を作りその中で生きている。それはまさに幻想で、客観的に真実で無くても一向に構わない。と言うか、真実とは何なのか?時として本当に分らなくなる。浅田次郎作の「母の待つ里」という小説で、母や家族や仕事を亡くした都会人たちがカード会社の勧めで虚構の母や故郷を疑似体験し安らぎを得て人生を見つめ直すという物語がある。いい大人が現実社会を逃避しいったい何を求めているのか?ただ安らげる環境や現実の世界とはほど遠い幻想の世界に身を置きたいだけなのか。
サラリーマン人生も長くなった彼は、ある飲み屋で隣に座っている二人組の全く知らないシニア男性に声をかける。シニアと言っても、スポーツマン風で、もみあげから顎に薄く白い髭を蓄え鼻の下の髭はないすっきりとした顔で、紺のピンストライプの背広に襟元が快適そうな薄いブルーのボタンダウンを着た会社役員といった風格の男性だった。「さっき小耳に挟んだんですけど、コンサルティングって何ですか?」彼は汎用品の営業マンで、もうすぐ50歳になり、会社員としての先も見えてきて自分の余生が不安だった。何でもいいから将来に希望が持てる話を探していた。「僕は形のあるものを売っています。でもコンサルって形は無いですよね?それはどういう商売ですか?」彼はコンサルティングを知らないわけでは無いが、皮肉っぽく尋ねた。東京暮らしも長くなりふるさと山陰の両親も他界したというそのシニアがびっくりした顔で彼を見て視線をそらし、一緒に飲んでいたもうひとりの男性に会話の中断を片手で示した。金色のそば焼酎のボトル横の透明なロックグラスに写った柔らかな光を見ながらこう言った。「夢を語る商売です。」彼はシニアが何を言っているのか分らず、「夢?」と聞き直した。彼の隣に座っていた涼しい目と真っ直ぐ高い鼻の女性は、「なんか詐欺っぽい。」と悪気の無さをわかってもらいたそうに微笑んだ。「そう、騙しているのかもしれないね。」シニアはそう返し苦笑いした。女に言われると腹が立たないが、女はいつも男の愚かさを指摘して目覚めさせる厄介な存在だ。ただきっとこの女もこの店の支払いは彼に任せるのだろう、本人はいつお目覚めになるのか?
ところで、ここでいう夢とは、バクの食う睡眠時の無意識な夢のことではなく、理想や目標という意味での意識的な夢のことである。そしてそれはバク以上に、人間が生きるために必要な糧でもある。
話をもとに返すと、「現実と夢の境を見つめ限界を超えさせる仕事」それがコンサルティングだとシニアは言いたかった。夢はあなたの理想であり、目標なのだ。もし自分の夢を語るとどうなりますか?お金?不動産?名誉?高級車?愛?言葉にすることは結構難しい。そうそれを考えるのがこのシニアにとっての一番大切なコンセプトなのだ。汎用品セールスの彼だってその美女とは友達だろうけどそれだけでふたりで飲みには来ないでしょ。ましてやお勘定もなんて。つまり彼自身も彼女との関係作りを自分自身にコンサルティング中ということだろう。彼女は彼の夢にはならないが、彼の夢が何かのヒントはくれそうだ。
神経科学者アニル・クマール・セスは「人間の意識に映るものは脳が構築した幻覚であり、我々は客観的な世界に存在しているのではなく、主観的な物語(幻想)の中で生きている。」と言う。人間は客観的に実在するものを自分の脳によって主観的に都合の良い存在に当てはめて認識しているのである。鏡やビデオに映るあなたしかあなたは自分を見たことが無い。自分の思う自分は他人から見れば他人に都合の良い存在でしかない。つまり人の意識は、”根拠の無い”それぞれの物語(幻想)なのだ。真実とは何か?疑問は残るが、ただスマホで探すのは、その自分の幻想を肯定してくれるおかずに他ならない。過去の嫌な記憶も楽しい記憶も、現在の諦めも、未来の素晴らしい成功もすべて主観的物語(幻想)である。付き合いたい異性も、安らぎを求める場所も全てあなたが大切だと創造した対象である。主観と客観のギャップに悩み、挫折し、多くの選択肢の中で後付けとも言える物語を自分の自由な選択だったとして鼓舞し、最後は「客観」と言う言葉に諂ってしまう。そうした「人の目」主義的な経験の枠に囚われた生き方は自由とは言わない。自分の主観も幻想ならば孤独かもしれない。しかしその限界を超え生き続けるエネルギーを得るためには「現実は幻想と知る」そして「夢を語る」ことが必要なのだ。
あなたは、自分の夢を言葉にできますか。
2026年2月3日
田村滋朗


